李舜臣くんの日記:第16回 ダメダメ左水使
8月1日
日本軍侵攻の兆(きざ)しがあるといえど、泰平の世が長く続き、みな安きに流れていた。
左水使(チャスサ・水軍司令官)とは、鬼になることなのだろうか?
先月、全羅左水営管轄下にある官営・蛇渡鎮の戦備の不備により、担当の軍官を処罰し上官の金浣(キム・ワン)を捕らえた。
今の私は人に嫌われることしかできない。
一昨日、防踏鎮の兵船の軍官らが、その兵船の修繕を行わなかったことにより、彼らに杖罰を加えた。
自分のやっていることに眩暈がしてくる。
宝城からの板子が期限に遅れて、いまだ納入されない。昨日、担当者に杖八十の処罰を加えた。
志を遂げるには、孤独を通過しなければならないことを薄々気付き始めている。だけど時々何もかも耐えられなくなる。
本日、蛇渡鎮の兵器を点検したが、矢も大砲も使えるものが一つもなかった。
「金浣てめえ、いい加減にしろよ!?」
と私がブチ切れると、
「うるせえ、階級七段飛びで左水使になった人間の言うことなんぞ聞けるか、ボケッ!!」
と金浣が逆ギレした。
「はあ!?もっかい言ってみろ!」
こうして私と金浣の殴り合いの喧嘩が始まると、周りにいた軍官みな沸き立った。
ダメダメ左水使。だけど日本軍侵攻の兆しに、私という一つの狂気。きっと正気の沙汰でいられないんだ――
カテゴリ:李舜臣くんの日記 | 2017-08-01 公開
« 藤原惺窩くんの日記:第13回 西笑承兌 藤堂高虎くんの日記:第13回 孤独 »
ランダムデイズ
- 伊達政宗くんの日記:第56回 ホトトギスが聴こえる
- 豊臣秀吉くんの日記:第32回 琉球国王尚寧と鶴松の誕生
- 藤堂高虎くんの日記:第15回 戦国デイズ11周年-転落
- 藤原惺窩くんの日記:第4回 全ての人々を敵に回しても
- 毛利秀元くんの日記:第13回 真善美