藤堂高虎くんの日記:第6回 左水使様と対等であるためにも、きっと


藤堂高虎戦国28年6月23日

功名を焦った脇坂安治が、巨済島へ手勢のみで出撃。

これを知った九鬼嘉隆隊長と加藤嘉明殿が急ぎ救援に向かったけれど、三日経ってもここ釜山日本本営に何の報も届かない。

今まで私含め日本水軍は、李舜臣率いる朝鮮水軍と何度も戦ってきたが、いずれもほぼ一日で決着が付いた。日本水軍惨敗という結果で。

恐らく脇坂も惨敗したのだろう。しかも壊滅的に――

もし命が助かったのであれば、私の経験からいって脇坂は部下と共に小島の陸地に逃れて、朝鮮水軍の追手に気付かれぬよう糊口をしのいでいるはずだ。

一方の李舜臣は、脇坂に勝利して勢いづいた朝鮮水軍を率いて、隊長と加藤殿の水軍に猛攻している只中のはずだ。

私が初志を貫けないのは、太閤のせい、太閤に隷従的な侍たちのせい、そんな日本人を大量に生み出した時代のせいだと思っていた。

脇坂安治

その頃の脇坂安治in閑山島

だけど左水使様(サスサ・李舜臣のこと)が海の上で爽快に日本水軍を倒す度に、初志を貫けないのは誰のせいでもない、単に貴様が意志薄弱だからだと、ガツンと一発殴られたような気持ちになる。

今は亡き豊臣秀長様(私の元主君)と戦争を終わらすために天下統一に尽力した日々も忘れて、大航海時代よろしく海外で手を血に染めて、私こそ時代の先頭切って流されている。

生き残りの脇坂隊の為に私に何ができるだろう。

その脇坂隊の救援の為に出撃した、心優しき隊長と加藤殿の為に私に何ができるだろう。

共感を許さぬほどの大志を抱いて、私は私を忘れたかった。

サスサ様と対等であるためにも、きっと――

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