毛利秀元くんの日記:第1回 戦国バレンタインももらわずに


毛利秀元戦国28年2月15日

初めまして。

毛利元就の四男・元清が嫡男・秀元と申します。数えで19歳に相成ります。

先日、我が殿・輝元公は広島城に僕を呼び出しました。そして、

日本と明の和平交渉が決裂した。その為、太閤殿下は朝鮮再出兵を決定し、日本軍総帥としてそちに出兵を命じられた。

と心痛な面持ちで僕に告げました。殿は毛利宗家当主で、僕のいとこです。

文禄の出兵で叔父上(小早川隆景)は、李如松将軍率いる明軍を撃破して功名を挙げたが、高齢ゆえ今は床に臥せておる。隆景の代わりは若輩ながら聡明な秀元しか務まらない、と殿下は仰せじゃ。

と殿は殿下からの文を僕に手渡した。

殿下の命には逆らうことができぬ。苦労をかけるが毛利の為にも引き受けてはくれまいか。

「大変光栄なことではありますが、お断り申し上げます。」

と僕は殿下からの文を握りしめた。

理由は?

「まだ戦国バレンタイン、もらっていないんです。」

一個も?

「はい、一個も。」

新妻は?

「まだ子供ですし、政略結婚だったので…」

僕はまだ恋もしてなかった。

毛利輝元

その頃、日本軍再出兵の報せを受けた明皇帝は、邢玠(けいかい)を経略禦倭軍務総督、楊鎬(ようこう)を経略朝鮮軍務使、麻貴(まき)を提督禦倭総兵官に任命し、大援軍を朝鮮へ派遣した。

そんな明の迅速な対応を知るよしもなく、間抜けな僕は朝鮮渡海の為、朝鮮役本営の肥前・名護屋に着陣した。

一個でももらえればきっと、これから降りかかるどんな苦労も困難も恐怖も乗り越えられる。

だから僕はこの日記を書きながら、日本を離れるギリギリまで家族以外の人からの戦国バレンタインチョコを待っていたんだ。

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