淀殿の日記:第36回 最後の人
12月27日
千利休が殿下に命じられて切腹。
翌年には文禄の役と呼ばれる、朝鮮への侵攻が始まった。
三年後には、関白・豊臣秀次が殿下に追放され、高野山で切腹。その一族は京都三条河原で斬り殺された。
その翌年には、京に大地震が起こって、殿下が建立した伏見城も方広寺の巨大な大仏も崩壊し、多くの人々が亡くなった。
生まれてきた時代が悪かったのか、わらわは、度外れな大惨事の脅威の中で生きておる。
それにしても、この上なく異様なことは、至高な生き方をしている人は、この大惨事の時代こそ、光輝いて見えるということである。
それは君が常に、いわばまるで、最後の人であるかのように生きているからだ。
そして今また、文禄の役以上の過酷さをもって、慶長の役という2度目の朝鮮への侵攻が始まろうとしている。
平和な時代では、君に気付かなかったであろう。
運命よ、時代よ。大野治長の存在なんか、わらわに気付かせてくれなくてもよかったのに。
もっと、つまらない気晴らしのような恋と人生でよかった。
それでよかったのに。
わらわは苦笑した。
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カテゴリ:淀殿の日記 | 2014-12-27 公開
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