小西行長くんの日記:第52回 秀家の手紙と背後の清正
月12月15日
おまえと違って俺はもう、誰も傷つけたくなかった。
なのに朝鮮の役に巻き込まれた俺は、全軍に遥か先立って、釜山(ぷさん)、とくねぎの両城を攻め落とした。
とは言え異国の地で俺は、とても心細かった。
元主君の八郎様(宇喜多秀家)は、出陣の順番からいえば8番目であったが、先陣の私を心配し、手紙をくださった。
「急ぎの書面によって志を述べます。このたび当地における比類なきお手柄は、豊臣家にとって無二の忠功と存じます。
私は貴殿が先立って先陣をつとめておられることを案じて、今晩、釜山浦に到着、明日はご当地に参陣してご相談いたしたく存じますので、詳細はその折に。恐々謹言 秀家より。小西摂津守殿」
これほどかたじけないことはない。まことに千万騎の味方とはこのようなことをいうのであろう。
一方、加藤清正は、俺に先を越されたことを無念に思い、その跡を追うのも不本意だというので、こもかい(熊川)に船をつけて上陸したらしい。
アホか。何故、こんな所まで来ておまえと争わなきゃいけないんだ。
だけどどうしてだろう。
おまえに八郎様の手紙を自慢してやりたかった。
誰よりもおまえに自慢してやりたかった。
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カテゴリ:小西行長くんの日記 | 2014-12-15 公開
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