上杉景勝くんの日記:第44回 引き裂かれた二人
11月26日
五大老の家康殿、利家殿、輝元殿、秀家殿、わしは本日、大坂城のクリスマスツリーの飾りつけをしていた。
「太閤殿下が建立された方広寺の大仏が大地震により倒壊してしまいましたね。」
と輝元殿がツリーに銀色の小さな星をつけながらため息をついた。
「再び大仏を建立すればよいこと。」
と家康殿がツリーに白い綿をつけながら笑みを浮かべると、
「冗談じゃありませんよ!」
と秀家殿がツリーに飾る青い玉を握りしめた。
「朝鮮出兵後、財政的にも心理的にも豊臣は疲弊しています。」
「つまり家康殿の狙いはそこじゃからのお。」
と利家殿はツリーに小さいトナカイをつけた。
「そう、だから家康殿は、朝鮮出兵には誰よりも真っ先に賛成した。」
「太閤殿下の忠臣として当たり前じゃろ。」
「・・・・・・・・・・・。」
秀家殿が言葉を失った時、わしはツリーの頂点に金色の大きな星を取り付けようとしたのだが、
ずって――ん!!
高さ約10尺(3メートル)の梯子から転落してしまった。
「大丈夫ですか、景勝殿!」
「家康殿は1兵も兵を出さなかったくせにッ!」
と秀家殿は青や紫、白と様々な色の玉を家康殿に向かって投げつけた。
「何故、秀家殿一人でも朝鮮出兵に反対しなかったのじゃ!」
「おやおや、この二人は景勝殿の惨事にはおかまいなしか。」
と利家殿は苦笑し、輝元殿とともにわしに肩をかしてくれたが、痛みを感じているのはわし以上に秀家殿と家康殿。
朝鮮出兵が、この二人の仲を引き裂いてしもうた。
外に目をやると、みぞれ交じりの初雪が降っていた。
カテゴリ:上杉景勝くんの日記 | 2014-11-26 公開
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