淀殿の日記:第22回 家族
2月3日
サル(秀吉)の容態が、悪化の一途を辿る。サルが死んだら、徳川方の全国の諸大名が、大坂城を潰しにかかるだろう。
燃え落ちてゆく夕日の影が、大坂城の廊下に茫然と立ちつくすわらわの足元に忍び寄る。その時、
「秀頼君、あそに大坂城イチ怖い鬼が立っておりますぞ。」
「鬼はあーしょと、福わあー内。」
と息子の秀頼は、わらわに向かって激しく豆を投げつけた。
「誰が鬼ですか。」わらわは北政所をギロリと睨んだ。
「おお、その顔はまさに鬼じゃ。」
と北政所の友達であるまつ殿が笑った。
「そなた、何をふさぎ込んでおる。」
「もしサルが死んだら、我等はどうなりましょう。」
「安心せい。秀頼も淀殿もわらわが守ってやる。」
「何故?」
「何故って、家族だからじゃ。」
「今更家族なぞ…」
わらわは不覚にも落ちた涙を拭いて、北政所に向かって豆を投げつけた。
「幼くして両親を亡くしたそなたと、実の子のないわらわとで作りあげた、今更でも、たったひとつの家族じゃ。」
と北政所もわらわに向かって豆を投げつけた。
「お、恒例の北政所様と淀殿のバトルが始まりましたな!」
「アハハハ!鬼はあーしょと、福わあー内!」
そうして混戦状態の豆まきが繰り広げられ、悲しみの数だけ豆が床に落ち、家族の温かさが床を埋め尽くしていった。
カテゴリ:淀殿の日記 | 2011-02-03 公開
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