淀殿の日記:第25回 家族


淀殿 戦国23年2月3日

サル(秀吉)の容態が、悪化の一途を辿る。サルが死んだら、徳川方の全国の諸大名が、大坂城を潰しにかかるだろう。

燃え落ちてゆく夕日の影が、大坂城の廊下に茫然と立ちつくすわらわの足元に忍び寄る。その時、

秀頼君、あそに大坂城イチ怖い鬼が立っておりますぞ。」「鬼はあーしょと、福わあー内。」と息子の秀頼は、わらわに向かって激しく豆を投げつけた。

「誰が鬼ですか。」わらわは北政所をギロリと睨んだ。「おお、その顔はまさに鬼じゃ。」と北政所の友達であるまつ殿が笑った。

そなた、何をふさぎ込んでおる。」「もしサルが死んだら、我等はどうなりましょう。」「安心せい。秀頼も淀殿もわらわが守ってやる。」「何故?」「何故って、家族だからじゃ。

「今更家族なぞ・・・」わらわは不覚にも落ちた涙を拭いて、北政所に向かって豆を投げつけた。「幼くして両親を亡くしたそなたと、実の子のないわらわとで作りあげた、今更でも、たったひとつの家族じゃ。」と北政所もわらわに向かって豆を投げつけた。

お、恒例の北政所様と淀殿のバトルが始まりましたな!」「アハハハ!鬼はあーしょと、福わあー内!

そうして混戦状態の豆まきが繰り広げられ、悲しみの数だけ豆が床に落ち、家族という言葉の温かさが床を埋め尽くしていった。

前後の日記

« »

ランダムデイズ

関連トピック