真田幸村くんの日記:第32回 あなたのコトバの記憶


真田幸村9月30日

私は今日、仕事の休憩時間に、真田丸を築く為にかかる普請の費用を計算した。真田丸は、堀の守りが手薄になっている大坂城南東に築く出丸だ。

しかし40過ぎのただの浪人、ただの戦国ハケンである私の考案した真田丸に、大坂城上層部は建設の許可を下さない。

何もかもうまくいかない時、私は自分の懐にある日記帳を取り出す。ページをめくればそこには、盛親先生のコトバで溢れている。

本当の情熱というのは、周りの人も変えてしまうものだ。

4月5日、その日の先生のコトバに目を止めた時、大坂城の若きエース・木村重成くんがいきなりやって来た。

お疲れ様です。今、宜しいでしょうか。」と真剣な面持ちの木村くんに、「何でしょう。」と私は首をかしげた。

幸村殿の真田丸について、具体的なお話を聞かせていただけませんか。一年以上前から上がっていた真田丸というアイデアが、上層部の一部にひねり潰され、私の元に届いたのが昨日のことでした。上層部のこの不始末、どうかお許しください。

木村くんは私に深々と頭を下げた。そして、この世の美しいものだけを選び取って映してきたような、その黒い瞳から涙がこぼれ落ちた。

私は木村くんにそっと白い手ぬぐいを差し出し、

本当の情熱というのは、周りの人も変えてしまうものだ。

先生のコトバが、希望から真実に変わったこの瞬間、この日記を私は先生に捧げようと思った。

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