小西行長くんの日記:第34回 言葉は二つで充分だった


小西行長戦国22年5月7日

太閤殿下から肥後国を賜り、ここに移り住んでから随分経つが、私はいまだに、この土地の人々との間に距離を感じていた。

まず、熊本弁がうまくしゃべれない。堺の商人だった私は、大阪弁がついつい出てしまう。それがいけないのかな、気をつけなきゃなと、川沿いをひとり散歩していた。その時、

どえりゃあ、うみゃあ~!

という声が聴こえた。名古屋弁?!幻聴かなと、川べりに目をやると、尾張国出身、加藤ご近所清正が村の人々と、川で釣った肴を焼いて食べていた。

小西、儲かりまっか~!

と私に気づいた清正が、私に挨拶した。「大阪弁で、こんにちはは、儲かりまっか~!と言うそうじゃ。」と清正が村の人々に説明した。「何んだ、そのガセネタ!」と驚く私に清正が、「小西も肴、食うか?」と言った。

いつの間にか私は、コトバだけでこの土地の人々との距離を埋めようとしていたのかもしれない。私にとってはコトバは、「こんにちは」と「ありがとう」の二つで充分だったはずなのに。

私は、村の人が用意してくれた床几に腰を下ろして、「おおきに。」と、私らしい感謝の気持ちを伝えた。そして清正が「うまか~!」ではなく、思わず「どえりゃあ、うみゃあ~!」と言った肴をいただいた。

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