淀殿の日記:第12回 写真もメールもいらない恋


淀殿 7月12日

戦国に写真がなくてよかった。写真の中の大野治長(はるなが)よりも、自分の頭の中に深く刻み込んだ大野治長の方が、より本物に近いはずじゃ。目の形、髪の質感、肌の色、えくぼに髭。その全てを、写真に頼らずとも、わらわは鮮明に思い出すことができる。

戦国に携帯がなくてよかった。大野治長のメールアドレスを、聞き出す手間が省けた。

戦国に携帯がなくてよかった。もし大野治長のメールアドレスを知ったとしても、メールが来ないいらだちを、わらわは知らずに済んだ。

一進一退。なかなか前に進まないこの恋に、全てを賭けても構わない。今どき流行らないこんな片思いに、わらわはこの人生の全てを賭けてもいいと、思っておるのじゃ。

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