小早川秀秋くんの日記:第12回 主馬だけは違う
8月19日
僕はいつも、大人の顔色をうかがって、生きてきた。太閤秀吉様の親戚である僕は豊臣家に迎えられ、学問にもいくさにも、自分なりにがんばってきた。つもりだったけれど、僕は豊臣家のお荷物的な存在になってしまい、毛利家本家に飛ばされた。
毛利本家でも僕は必要とされなくて、毛利は僕を小早川家に追いやった。がんばって生きれば生きるほど、歯車がくるってしまうのは何故だろう。
誰も僕にがんばれと頼んでいないのに、ひとりでがんばってしまっただけ。と思ったら涙が出てきた。すると、僕の部屋に家臣の松野主馬(しゅめ)がやって来た。
「先日、大坂に行った時、購入した朱色の日記帳です。中は柔らかい紙でできています。秀秋様は朱色が好きとのこと、お伺いしております。日記をいつも書かれている秀秋様に是非にと思いまして。」
と主馬は僕に朱色の日記帳を渡した。主馬は主君である、僕に媚を売っているのか。違う。大人の顔色ばかりうかがっていた僕には、悲しいほど、主馬だけは違うことがわかる。わかってしまうのだった。
カテゴリ:小早川秀秋くんの日記 | 2008-08-19 公開
« 松永久秀くんの日記:第26回 いいや信長だし 今川義元くんの日記:第20回 ほっこりスポーツ »
ランダムデイズ
- 小西行長くんの日記:第27回 宇土城の住所
- 明智光秀くんの日記:第50回 明智式☆豆まきパラダイス
- 山内千代さんの日記:第14回 悪女
- 大谷吉継くんの日記:第20回 ほっこり祭りⅡfeat日本一のキリシタン
- 藤堂高虎くんの日記:第11回 君に聴いてみたいこと