藤堂高虎くんの日記:第20回 公冶長
12月23日
「私は別に構わないのですが、あなたはこのまま引き下がれるのですか。」
高野山に引き籠る私の元を訪れた太閤の側近・浅野長政殿は言った。
「どういうことですか。」
宿坊の縁側で私は尋ねた。
「朝鮮水軍将・李舜臣に背を向けたままでよいのですか。」
「彼は反派閥の水軍将に陥れられ、王命によって牢に繋がられているとか。」
「そのうち出てきたら?」
「保証はありません。」
「他の日本の将が李舜臣の首を取ったら?」
「死んでも死に切れません。」
「もう答えは決まってるではありませんか。」
「いえ、再び争って死ぬのは李舜臣ではなくどちらかいえば私の方かと…。」
「公冶長(こうやちょう/孔子の弟子)、縲世(るいせい/獄中)の中に在りといえども、」
「その罪にあらざるなり…(論語・公冶長)」
「よくご存じで。孔子は、公冶長が投獄されようと彼の罪ではないと彼を認めていました。」
「公冶長は李舜臣だと?」
「公冶長はその後、どうなったのでしょうね。出て来られたらいいのですが。」
と浅野殿は笑って、私の肩を叩いた。
李舜臣の心の強さはどこから来るのだろう。
朝鮮の学問である儒教から来るのかなって、暇だし私も論語を読んでいた。
どんな孤独も痛みも一人耐えている。
縲世の中に在りといえども、君は負けないだろう。
カテゴリ:藤堂高虎くんの日記 | 2018-12-23 公開
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