藤堂高虎くんの日記:第11回 君に聴いてみたいこと


藤堂高虎1月24日

大切なものは何があっても手放したくない。

だけど君は別に私のもんじゃないし、意に反して忍び寄る別れの時。

 

去年の四月に朝鮮侵攻が始まって以来、敵に負け続けた我ら日本水軍。だけど各地に義兵が起こると日本陸軍も劣勢に陥った。

年明け正月には明の大援軍が到来し、小西行長ら籠る平壌城を攻撃、小西らは敗退した。もう限界だ。日本全軍が朝鮮から撤退するのも時間の問題。

だけど私は、まだ左水使(サスサ)こと李舜臣に一勝も挙げてない。それってまだ戦争を続けたいってこと?自分の問いに卒倒しそうになった。

ここ釜山日本本営も厭戦気分が漂って皆帰国したがっているし、何より左水使が我らの帰国を願っている。

だけど私は一度、君と話をしてみたかった。最初の海戦・玉浦で、沈みゆく船から無傷の船に立つ君を一瞬見たけど、まだ声を聴いたことがない。

あんなに君と死闘を繰り返したのに、一度も言葉を交わしたことがなかった。

 

うまッ!人間、何か一つは取り柄があるんだな。

と釜山浦で私の作ったスンドゥブを食べながら脇坂安治が言った。

ホントですね。おかわり!

と加藤嘉明から器を渡された。

スンドゥブ

スンドゥブ

ブッコロス。いいじゃないか、こいつらともやっとおさらばだ。

大切なものは何があっても手放したくない。

だけど君は別に私のもんじゃないし、意に反して忍び寄る別れの時。

私は左水使に聴いてみたかった。

スンドゥブの具材は、卵とあさりとネギと豆腐としめじの他に何を入れるべきかを。

他にもっと聴くべきこともある気がするけど。

私は苦笑した。

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