藤原惺窩くんの日記:第4回 全ての人々を敵に回しても


藤原惺窩戦国28年4月18日

儒教を学びに明へ渡海したいだと!?

と但馬竹田城主・赤松広通様は絶句した。

竹田城の庭園において私は、幼馴染で弟子もある広通様の目を真っすぐ見て

「さようでございます。」

と答えた。

文禄の役が終わり今は一時停戦中だが、太閤が明国制圧を諦めたわけではない、この状況で?

「そんな状況だからこそ、学問する楽しさを説く儒教がこの国には必要なのです。」

そちは禅僧だ。仏の教えでは駄目なのか?

「こともあろうか五山の僧は、侍が朝鮮から盗んでくる漢籍を心待ちにしています。また本願寺は、布教の為に釜山に寺を建立したそうです。仏教だけでは何とも心許ないのです。」

しかし今更儒教だなんて、そんなカビくさい学問、本当に役立つのか?

「故(ふる)きを温め新しきを知る、以て師となすべし(論語・為政)――違いますか?」

そうかもしれないが、私は惺窩の命が心配なのだ。敵国・明に遊学の為に渡海するということは、太閤・諸大名・仏教界、日本の全ての人々を敵に回すということだぞ?

赤松広通

赤松広通

「構いません。生の維持に心を砕くのではなく、私は死ぬ気になって今やらねばならぬことを成し遂げたいのです。」

惺窩の覚悟、相分かった。これを金に換えて旅費の足しにするがいい。

と広通様はお召しになっていた羽織とお腰の刀を私に差し出された。

「広通様!」

但し明へ無事到着した際は、土産として明のゴーフルを買ってくるように。

「明にもゴーフルがありましょうか?」

明が愉快な国なら、きっと。

広通様と私は笑った。

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