小西行長くんの日記:第48回 突然降られてやんの。
8月24日
8月7日、立秋の日。秋の始まりとは思えない炎天下のあぜ道で清正に逢った。
俺は何事もなかったように、何一つ言葉を交わさず、清正の横を通り過ぎた。
8月21日、満月の日。日が落ちて、蝉の声も静まったあぜ道で清正に逢った。
俺は何事もなかったように、何一つ言葉を交わさず、清正の横を通り過ぎた。
8月25日、本日の正午。晴天から突然のスコール。笠もなく、雨に打たれながら歩くあぜ道で清正に逢った。
俺は何事もなかったように、何一つ言葉を交わさず、清正の横を通り過ぎた。
その時、「突然降られてやんの。」と清正が俺を引き止めた。俺は振り返った。清正も笠をかぶってなく、頭のてっぺんからずぶ濡れだった。
「お互い様だろ。夏くらいどっかに行けよ、うっとうしい。」「おまえこそ帰郷でもしろよ。」

加藤清正
帰郷ならした。
根無し草の俺は自分の孤独に帰った。そして孤独にじっと耐えて気付いた。
俺は孤独なのではない。
ただ殿下から、周りから、疎外されいるだけなのだ。
俺はそういう寂しい人間だ。
だから清正。
俺とすれ違っても声をかけなくていい。
隣りだからと言って、そんなふうに声をかけてくれなくていいんだ。
カテゴリ:小西行長くんの日記 | 2013-08-25 公開
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