真田幸村くんの日記:第33回 年下の大先輩、ふたり。
今日も午後は外に出て、私は大坂城の草むしりをしていた。自分の爪に深く入った土をどうにかして取ろうとしていた時、大坂城の若きエース、木村重成くんがやって来た。
「幸村殿、お疲れ様です。私から秀頼公に真田丸の件をお話しした所、大変興味を持ってくださり、秀頼公は幸村殿に直接お話しを聞きたいと仰せられました。」
私は木村くんの言葉に驚いた。「それは光栄ですが、貧しい私は貧相な直垂(ひたたれ)しかなく、大坂城のリーダーである秀頼公にお目見えするにふさわしい衣服がありません。」
「それではこれで、新しい直垂を用意してください。」と木村くんは懐から小判を出した。「木村くんからこんな大金、もらえません。」「これは私の金ではなく、大坂城の経費から落としたものなので、どうぞ御心配なく。」と木村くんは笑った。
大坂城上層部が、戦国ハケンの私の為に金など出すだろうか。小判は木村くんのお金の様な気がした。そして今日は、ハタチ前後の木村くんが、四十代の私より遥か大人に見えた。
そういえば私より八つ年下の三十代の盛親先生も、私の倍は生きているような、険しさと優しさを兼ね備えている。
けれど第一印象は、木村くんも先生も最悪で、上司が年下だったり、年下に指図を受けることも、私のプライドが許さなかった。
けれどそんなプライドは、さっきまで爪に深く食い込んだ土が、いつの間にか自然に取れていたように、消えていたのはどうしてだろう。
カテゴリ:真田幸村くんの日記 | 2010-11-04 公開
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