北条氏康くんの日記:第35回 ただの成り上がり


北条氏康 戦国22年9月4日

私は河越夜戦で武蔵国を手に入れたが、武蔵国の人々は北条を簡単には受け入れてはくれなかった。

検地もうまく進まず、武蔵国の有力豪族である岩付城(さいたま市)の太田資正と、勝沼城(東京都青梅市)の三田綱秀は、越後の上杉謙信と通じ、反北条の立場を明確にした。

この状況に、屋敷で頭を抱えていた時、「殿、お呼びでしょうか。」と家臣の綱成がやって来た。「遅かったじゃない。」と私は、真新しい黒の陣羽織を綱成に渡した。

何の褒美でございましょう。私は昨今、何の手柄も立てた覚えがありませんが。」と驚く綱成に私は笑った。「手柄なんてまた、すぐに立ててくれるでしょ?」「それはそうですが。

「私は今、自軍の十倍の兵力と戦った河越夜戦よりも、大きな試練と戦っている気がする。」「どんな苦しい試練でも、心配ありません。何故なら私達は、戦う前にー」「勝つ。いつだって戦う前にー」

勝つ!」と綱成は笑って、私が下賜(かし)した陣羽織を羽織って、ポーズを決めた。「うんうん、よく似合っている。」と私は笑った。

綱成は、北条一門だけでなく、武蔵国の人々の心もとらえるような、カッコイイ武将でいてよ。」「その為にこの陣羽織を?

「そんなとこかな。彼等は北条なんて、何もいい所がないと思っているから。」「ただの成り上がりですしね。」「そう、私達はただの成り上がり。」綱成と私はまた笑った。

乗り越えることができそうにない試練も、私達なら大丈夫。戦う前に勝っているのだから、乗り越えられる。綱成がそう言うのだから、きっと間違いないのだと思う。

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