北条氏康くんの日記:第34回 大失敗の税制改革。
7月16日
河越夜戦に勝利し、武蔵国を手に入れた私は、税制改革に踏み切った。
そして今日、河越城主の大道寺政繁から文が届いた。それは、新たに設けた税が重すぎて、武蔵国の百姓の多くが他国へ逃げてしまったとの報告だった。
何が税制改革だ。武蔵国の百姓は、私に失望し、他国へ逃げたのだ。早く対策を打たなければ。しかし私は頭が真っ白になり、前へ進めなくなってしまった。そんな時、
「殿、甲斐国の武田家から、只今戻りました。」
と綱成(つなしげ)が、部屋でうずくまっていた私の前に現れた。「随分、遅かったじゃない。」「すみません。でも泣かなくても。」「泣いてない。」
「三国同盟会議の際、殿は信玄公に、綱成を返せと泣きながら懇願してくれたそうで。信玄公は、その時の殿のことを、私に笑いながら話してくださいましたよ。」
「泣きながら懇願なんかしてない。」「そうですか。それよりまた、政(まつりごと)でお悩みですか。」「なんで。」
「何も話さなくても、殿の顔を見ればわかりますよ。腐れ縁ですから。」と綱成は笑って、信玄殿にいただいたという信玄餅をひとつ食べた。
綱成が戻って来てくれたことで、私はもう一度、武蔵国の百姓の信用を取り戻すチャンスを、天から与えられたような気がした。綱成がいないと何もうまくいかないなんて。私は苦笑した。
カテゴリ:北条氏康くんの日記 | 2010-07-16 公開
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