北条氏康くんの日記:第43回 虎朱印


北条氏康戦国23年10月13日

先月、私の息子、長男の新九郎が夭折してしまった。

新九郎。その名を名乗る者は、北条家当主になることを運命づけられていた。祖父も父も、そして私も、幼き頃は新九郎と呼ばれていた。

殿。」気付けば綱成が私の部屋に入って来て、譜代衆から預かった大量の願(書状)を私に差し出した。「ごめん。今は目を通す気分じゃないんだ。」「気分の問題ではありません。

「ならば綱成が私の代わりに許可を出し、虎朱印を押してやってくれ。」「当主しか持つことが許されない虎朱印で、私が許可を出し印判状を発行するなどありえません。

「だからいつか、四代目新九郎にこの虎朱印を譲り渡すつもりだったのに!」

私は差し出された願を振り払い、綱成の襟を強くつかんだ。

虎朱印に刻まれている、禄寿応穏 (ろくじゅおういん)。殿はこの言葉のように民の平和を願い、命懸けで民を守っていく使命をお忘れか!

「うるさい!綱成に今の私の気持ちはわからない。」「わかりません。わかりませんが私を突き動かすもの、それはいつだって自分には手に入らなかったものや、失ったものの数々だったような気がします。

ああ、嗚呼・・・・・。こらえていた涙が私の目から落ちた。綱成はなんで、いつだってなんで・・・。人に涙を見せたのは今日が、綱成が、初めてだったかもしれなかった。

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