大谷吉継くんの日記:第5回 麦秋(ばくしゅう)


大谷吉継戦国19年5月28日

5月、麦を収穫する季節になると思い出す。昔、太閤殿下が催したある茶会。名立たる武将が集まった。

回される太閤殿下が立てた茶。しかしみな、飲むフリだけをしていた。ハンセン病の私が最初に口をつけてしまったからだ。私は、その場にいたたまれなかった。

しかし、石田三成は、最後に回ってきたその茶を、全部飲み干した。

茶会が終わったあと、私は三成を追いかけた。道の真ん中で彼を見つけ「佐吉。」と声をかけた。しかし声をかけた後のことばが続かなかった。三成は「紀之介(吉継)、麦秋だ。」と遠くを指した。

麦を収穫する人々。多くの穀物は秋に収穫するのに対し、麦だけは、初夏に収穫する。それを麦秋(ばくしゅう)と言った。三成と私は、ただ黙って季節はずれの秋をいつまでも見つめていた。

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