石田三成くんの日記:第13回 市(福島正則)


石田三成 2月20日

今日の夜は太閤殿下の長浜城時代からの古い家臣団、特に尾張出身の家臣らが集められ、大坂城で薪能(たきぎのう)が行われていた。私自身は太閤殿下の家臣には珍しい近江出身で、尾張衆にはことごとく、何故か嫌われていた。太閤殿下には佐吉(三成)も薪能には出席するようにと言われていたけれど、仕事がありますのでとお断りした。

仕事を終え、遠くから、かすかに聴こえる笛の音、そして夜を照らす薪の炎を眺め、帰ろうとした所、「おい、佐吉。」と後ろから声をかけられた。振り返ると市(福島正則)が立っていた。尾張衆代表の市とは小さい頃、太閤殿下、秀吉さまの下で同じ釜の飯をくった仲間である。しかし市とも御多分にもれず、仲がよくなかった。

私は今回はなんの苦情だろうと思いながら、「薪能はご覧にならないのですか。」と聞いた。「薪能より礼が先じゃ!佐吉が先月、諸大名の前で観光スポットとして勧めた、常陸国(茨城県)の大洗、実際に行ってみたが、すばらしかった。大洗は男らしい海じゃった。佐竹義宣(よしのぶ)殿曰く、常陸国はブラボー!だっぺ!

ブラボー・・・だっぺ・・・」と私がつぶやくと、「ブラボー!だっぺ!」と市が反芻(はんすう)した。「ブラボー、だっぺ。」「ブラボー!だっぺ!」「ブラボー!だっぺ!」「ブラボー!だっぺ!」「ブラボー!だっぺ!

もしかしたら市と私の声は品格ある薪能まで届いてしまったかもしれない。市とこんなに笑い合ったのは何十年ぶりだろう。尾張衆に避けられているのではなく、私が避けてしまった。そんなことを、薪能も見ずわざわざ私に礼を言いに来た市に教えられてしまった、夜だった。

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