石田三成くんの日記:第9回 真夏の林檎
9月6日
今日、大坂城に毛利輝元殿から荷物が届いた。開けてみたら、箱の中にギッシリとリンゴが詰まっていた。「今年、真夏に収穫したリンゴです。太閤殿下(秀吉)に献上致します。」と文が添えられていた。輝元殿は去年の初冬、桃を殿下に献上してきた。その時、私は季節じゃないモノは、殿下の体を壊す可能性もあるし、そうなったら、何より輝元殿が困るからと断った。
なのに、今年は真夏のリンゴ。見た目は普通のリンゴより、小さくて色も薄い。栄養もなさそうだ。ひとつかじってみた。まずくない!このリンゴを殿下に献上したら、珍しいから、殿下はきっと喜ぶだろう。そして、輝元殿も。でも、もう若くない殿下の体がやっぱり心配だ。
忠義という重い荷物を降ろしたら、私はもっと楽に生きられるだろう。でも、降ろせないなら、この真夏のリンゴは輝元殿にお返しし、毛利家から私は今年も非難を受け、益々この大坂城で、孤独になっていくしかなかった。
カテゴリ:石田三成くんの日記 | 2007-09-06 公開
« 豊臣秀吉くんの日記:第8回 太閤殿下と内府 小早川秀秋くんの日記:第4回 ガラスの十代 »
ランダムデイズ
- 毛利秀元くんの日記:第1回 戦国バレンタインももらわずに
- 淀殿の日記:第34回 華麗なる滑稽
- 豊臣秀吉くんの日記:第52回 朝鮮通信使来日
- 藤原惺窩くんの日記:第4回 全ての人々を敵に回しても
- 加藤清正くんの日記:第41回 臨海君と順和君